光弾性を使った力の教材化                

箕面市立第五中学校  石田悦子

. はじめに

 中学校1年力の学習時、机の上の本にはたらく力を考えさせ「抗力」という語を説明する際に、「机が本を押し返す力」という概念が生徒には実感としてわいていない不消化の段階で、「抗力」の矢印を書いてすすめてしまっている現状がある。力が目に見えないためにますます力学ぎらいをうみだすことにもなっている。何とかしてこの分野を目に見える形で理解を深めさすことができないかと考え光弾性に取り組むことにした。

 さらに、力の基礎学習後、力学を基礎にした技術への道も発展学習として取り入れられないかと工夫を試みた。

 

. 光弾性を使って抗力を説明するための教材

 透明なプラスチックを透過軸が直交する2枚の偏光板の間に置き、プラスチックに応力を加えると、プラスチックの分子が一定方向に並びやすくなり、複屈折の性質を帯びる。その結果、透過光には加えられた応力に応じた縞模様が現れる。 この現象を光弾性と呼んでいる。光弾性は材料の歪みや応力分布を知る手段として利用されている。

偏光板2枚(光源側が偏光子、観測者側が検光子、2つの偏光板の透過軸は直交さす)と光源(太陽光、蛍光灯、白熱電球、いずれも可)と試験片の透明スーパーボール(直径45mm)を用意し図1に示した装置を組み、観察する。  [なお偏光板の透過軸とは、偏光板が光の振動を通過させる軸]

 

 写真 @

                           

実験台上に置いた透明スーパーボールの台に接触している部分が写真@のように色づいてみえることから、机から透明スーパーボールに力がはたらいていることが実感させられる。

 

. 身近な透明物体を使って力の伝わり方や歪みを観察させる教材

(1)図1と同じ装置で試験片として透明軟質塩化ビニル(テーブルクロス)を使って、引っ張ったり、ねじったりして観察する。写真Aは厚さ3mmの軟質塩化ビニルをねじってから両端を引っ張ったときのものであるその結果ねじっているすべての部分に力が作用し歪みが観察される。

 

 

 

写真 A

 

                           

 

 

 

 

 

写真 B

 

(2)図1と同じ装置で試験片として寒天を使って観察する。写真Bは同じ大きさの固めの寒天2個をつくり、重ねて上から指で押したときのものである(光源は蛍光灯)。下段の寒天に歪が及んでいる様子が観察される。

(3)ゼリーを固めにつくって同様の実験をしたが、すぐに破壊され適当な材料にはならなかった。

 

. 2力のつりあいを観察させる教材

 厚さ2mm軟質塩化ビニルを幅20mmぐらいで適当な長さに切って、OHP用のタングステンハロゲンプロジェクターランプ(以下ハロゲンランプという)を光源にして、偏光板の透過軸を45°傾けた間に置いてスクリーンに映し出す。テーブルクロスの両端を引っ張って静止させたとき、スクリーンに映し出した色が、小さい力の時は全体が均一に青色になり、力を大きくすると黄色にかわり、さらに大きくすると橙色になる。色が均一ということで、つりあいのイメージをふくらますことができるのではないかと考えられる。

 

. 力の大きさを変化させていくときの連続的変化を観察させる教材

(1)白色光であるハロゲンランプを光源として、その上に2枚の偏光板(透過軸直交)をおき、偏光板の間に透明スーパーボールを入れて指でいろんな方向から力を加えてみると歪の様子が色模様となって観察できる。そのビデオ撮影の一部が写真Cである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真 C

 

 

(2)単色光であるナトリウムランプを使って(ただし、光源と偏光子の間に図2のようにフレネルレンズを置く)、透明スーパーボールを上下2点で押してみると左右対称のきれいな暗黒線の縞模様が見られ、その縞数が増えていくのが観察できる。そのビデオ撮影の一部が写真Dである。

 

 

 

 

 

 

 

写真 D

 

 

 

. 白色光と単色光の比較実験

(1)光源にはハロゲンランプを用い、偏光板の間には、四角形のアクリル板(30×30×9mm)をおき、そのアクリル板を図3のような装置でナットを締めながら1点(釘の部分)に大きな力を加えていく。その結果の一点近くの写真がEである。

                       

      

      

      

      

      

      

                       

写真 E                写真 F

(2)光源にはナトリウムランプを用い、(1)と同様に実験をする。写真Eと同じ力をかけた時が写真Fである。(1)と(2)から、光弾性を解析していくには色模様では複雑であり、単色光の暗黒線縞数が適当と判断される。   

 

 

. 暗黒線縞数と荷重量との関係を求める実験

テキスト ボックス: 0 [ ナトリウムランプ光源のもとでの透明スーパーボールの暗黒線縞数の増減について考えられること]

荷重と暗黒線縞との状態は、上下の圧縮荷重を徐々に増加していくと、荷重2点より互いに円形状の暗黒線縞が次々と現れ、中心にむかってふくれあがる。そして荷重点から出た同じ縞が中心で互いに相接した後、左右に分かれて横方向の端に向かって移行していく。いま、図4のように、球あるい

 
は円板の外周の暗黒線から順に1次2次と線の数を数えると、荷重が大きくなるにつれて暗黒線の数が増加する。(矢印部が荷重点。)そこで、中心部における縞数と荷重との関係を求めてみる実験に取り組んでみた。

 

[方法]

(1)実験装置は図2と同じものを用い、試験材料としては、直径45mmの透明スーパーボールを用いる。その上にアルミ板(177.8g)をおき、更にその上におもりをのせて荷重変化に対する中心部の暗黒線縞数を読み取る。

(2)(1)と同様の方法で、試験材料としては、厚さ10mm直径20mmのアクリル円板を用いる。これを万力の間にはさみ圧縮していく。荷重量の相対値として、万力を何度回転したかで荷重量に代える。

 [結果]

(1)と(2)の実験結果をグラフ化したものが図5と6である。

 [考察]

  図5から、スーパーボールにはも ともと少し歪があったものと思われ

る。約1000gまでの荷重の範囲内では暗黒線縞数と荷重量とは直線関係

があることがいえる。また、1000g以上ではスーパーボールの変形

が大きくなりすぎたために、荷重に応じた歪みが発生しないものと思わ

れる。

   

 

 

 

 

テキスト ボックス: 図6

 

図6から暗黒線縞数と荷重(相対値)との間に直線関係が成立している。

 

 

 

. 力に耐える構造物への発展学習の教材化

 図8のようないろいろな形の構造物に似せたものを厚さ2mm程度の軟質塩化ビニルでつくって、図7のように、2mm程度の隙間を空けた2枚の偏光板の間に挿入して、力を加え歪みぐあいをみる。ただし加圧の際に試料がねじれないように、偏光板の外側をアクリル板で押さえを施してある(図9)。光源は白熱電球を使用し、観察結果は写真GHIである。これによって構造物のどこに歪みが集中しているかがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス:

              

 

 

 

写真 G

 

 

 

 

                                

 

写真 H

 

 

 

 

 

 

 

写真 I

 

 

 

. 光弾性を観察するのに最も適する材質と成型について

 スーパーボールでは軟らかすぎ、アクリルでは硬すぎる。その中間ぐらいの材質で加工成型しやすいものとして、エポキシ樹脂に注目した。成型したい型枠に離型剤を薄く貼付し、主剤と硬化剤を良く混合して型枠に流し込み、1〜2日放置する。このように成型したエポキシ樹脂の四角板(75×40×5mm)の3点を図3のようにして加圧したものを、ハロゲンランプとナトリウムランプで観察してみた。その写真がJKである。その結果小さな力で歪みが発生するために、光弾性の感度が非常に高かった。ただ、残念なことに力をかけすぎると元に戻らないので再利用はできない。また、柔らかいので加工が楽にできる利点があることもわかった。

 

 

 

 

 

 

 

写真 J                   写真K

 

 

10. エポキシ樹脂でつくったアーチ橋

「なぜ、石づみしただけのアーチ橋が下から何も支えがなくても、石は落下しないのか」

とても不思議である。

そこで、図10のようにして5個の石組みの代わりに、5個のエポキシ樹脂のピースをつくってアーチ橋のように組み立て、上から押し、そのときの光弾性を観察する実験をした。その結果が写真Lである。この写真から落ちようとするエポキシどうしが両どなりのエポキシを押している様子が良くわかる。

なお、この実験の場合、エポキシが軽いことと、接触部分の摩擦が小さいために、最下段のピースが横に拡がる動きをしたので、その部分だけは支えなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

写真  L

 

 

1. おわりに

 偏光板を利用すると、身近な透明物体を使ってその物体の歪みが直接観察でき、力の学習教材に利用できる。

特に身近な物体として、透明スーパーボールは安価で、生徒の力範囲で力の大きさや方向が簡単に変えられ、光弾性変化がすぐに現れる。またテーブルクロスや寒天も手軽で使いやすい材質である。しかし、構造物についての観察をする際には成型加工も含めてエポキシ樹脂が最適である。

今までは矢印表現で力学を学習させてきたが、光弾性は生徒たちにいろいろな力を目で実感させることができる教材として有効なものであるとわかった。

今後は、力の学習の発展課題として、身の回りの構造物の形の意味を考えさせ、また光弾性の技術利用へも目を向かせる授業研究を続行し、さらに多くの力学好き生徒をつくっていきたいと思っている。

 

 

12. 参考文献

○益田義治:入門光弾性実験、日刊工業新聞社

 ○平田允:大阪と科学教育 17

 ○森本進、鳥本昇:大阪と科学教育 2

 ○http://www.urap.org/forum/ashi/science/poierd/poier.htm

 ○大竹三郎:橋をかける、大日本図書

 


    科学実験・製作倶楽部TOPへ戻る