『ポンポン船の研究』…より速く、より大きく…
岸和田市立桜台中学校 中原寿男
1.はじめに
安定した振動をしながら、きれいな波紋を描いて力強く進む「ポンポン船」を見て感動した。そしてどのような原理で進むのか知りたくなった。また、より速く進むようにするにはどのような方法があるのか、より大きくしていくと人が乗れるくらいの大きさにできないだろうか…と童心に返り、ロマンを求めて研究したくなった。
2.原理
フォーラムのレポートを参考に中の見えない動力部を見えるようにガラスで作り、加熱により水がどのような動きをしているのか、『自励振動』ってどんな振動なのか調べた。
(1)管単
単管では突沸が起こったり、振動が止まったりして安定した振動はなかなか得にくい。

(2)U字管

(3)コイル
単管よりU字管、U字管よりコイルの方が安定した「自励振動」が得やすいことが確認できた。さらにより安定した振動を得るためにいろいろ条件(管径、加熱部から開口部までの距離、加熱の強さ、…)を変えてやってみたが、熱伝導率が低いガラスではなかなかうまくいかなかった。内部の見えるガラスでは振動数や振幅が測れるという利点がある。しかし金属では見ることができない。そこで内部の見えない金属でも振動数や振幅が測れないかと考えてみた。
3.振動数・振幅の測定
(1)小型スピーカー+オシロスコープ法
パイプから出る振動をスピーカーでひろいオシロスコ
ープで振動数を測定する。(波形をビデオで撮影する。)

(2)パイプに透明ビニール管をつないでストロボ法

この部分の振動を見る。振動数は ストロボを使って読み取る。
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4.より速く、より大きく…
原理から単純に考えてより大きな推進力(排水量)を得るためには、
@より多い振動数 × Aより大きい振幅 = より大きい排水量 で計算できるのではないかと考えた。そこでいろいろ条件を変えて振動数、振幅および実際の速さを測定し結果をまとめた。用いた金属パイプはアルミニウム、真鋳、銅の3種である。また速さは100cmの距離を何秒かかるか安定したところで測定し、10回の平均で出した。
@
パイプの内径による変化 アルミ管の全長…20cm 水中部…5cm
コイルの巻数…3回
外径 内径 4mm 3mm 5mm 4mm 6mm 5mm
(4mmの排水量はビニール管がなかったために計測できず。)
―考察@−
内径が大きいほど振動数は減るが一度に排出される水量が大きくグイグイって感じで進む。ただ、突沸が起こりやすく(突沸が起こるとかえって一回で進む量は大きくなるが)、安定感は若干かける面がある。
6mmを越えるパイプは実験でデータがとれるだけ安定した振動は起こらない。
A
パイプの全長による変化 真鋳の内径…3mm コイルの巻数…4回 水中部…5cm
25p


−考察A−
管の長さが変わっても排水量はほとんど変化が見られなかった。速さについても10cmを除いて変化が見られなかった。加熱部の条件が変わらないためだと思われる。10cmに関しては振動部からかなり近いのでその影響が出ているのかも知れない。
Bコイルの巻数による変化 真鋳の内径…3mm コイルの全長…20cm 水中部…5cm
―考察B−
おそらく熱の吸収効率が高くなっているのだろう、巻数を多くするにつれて排水量、速さともに一定の割合で増えた。またガラスの実験でもわかっていたが、巻数を多くするにしたがってさらに安定した振動をえることができる。(ただし強熱した場合、巻数は関係せず不安定になる。)
C水中部の長さによる変化

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―考察C−
振動数や振幅のデータもなくサンプル数も少ないのでどこまで信憑性があるかわからないがいずれの場合も水中部が長い方が速く進んだ。冷やされる部分が多いので振動数が多くなっているのかも知れない。
D加熱の強さによる変化
―考察D−
当初は『どんどん加熱すればそれだけ進む』と思っていた。…しかし厳密に(ニクロム線)を使って実験したわけではないが、それは大きな間違いで安定した振動を得るには緩やかな加熱で十分であることがわかる。
5.総合考察
考察@〜Dおよび色々な実験を通しての反省をもとに考えてみると、より速くより大きいポンポン船にするには次のようなことが言える。
・管の内径は大きい方が良いが6mmを越えると安定した自励振動は得にくくなる。
・コイルの巻数は多い方が良い。 ・水中部の長さを長くする方が良い。
以上のことを考えて内径10mmのアルミ管で船を作ってみた。

市販のポンポン船は1mをおよそ8秒で進む。今回の実験の中で製作したものは速いので8秒〜10秒。遅くなると15秒以上もかかることがあった。…当初の目的である「より速くより大きく」の夢への第一段階として最低でもこの『8秒』を切る必要がある。…ガスバーナーを使っての実験段階では10mmの管からは振動は得られなかったので、半分遊びで船を作って浮かべてみると、な、なんと、走る!ドッドッドッドッ!
前へ力強く(後ろへも力強く)きれいな振動大きな波紋を残して進む。そしてついに8秒の壁を切った。しかし、しばらくすると(約5〜15秒程度)振動は止まる。その後よく観察すると止まった後で細かくきれいなほとんど推進力とはならない自励振動が生まれる。これはどうしてなのか?ひょっとして大きな推進力となったのは動画(ガラスU字管)で示した振動ではないだろうか?(振動数がかなり違うけれど)と、U字管でやってみたが走らなかった。その後、強熱すると大きい振動は長い時間(1分程度)続くことがわかった。どうやら振動は2種類あるように思える。
まだまだ調べなければ何とも言えないが、少しだけ前途が明るくなった。
6.おわりに
本当に童心に戻って『なぜだろう?』『こうすれば、どうなるのか?』と、真剣に取り組むことができた。しかし条件がたくさんあり統一するのが難しい。また時間がなくてほとんどわからないことだらけ。でも確かめたいこと、工夫してやってみたいことなどまだまだたくさんある。特に実物の動力部は右図に示すようにコイルではなく薄く面状になっている。それを大きくすればどうなるのか?なかなか『人が乗れるほど大きなポンポン船』っていうのは難しそうである。が…。